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逆風に立ち向かうシナリオ| 株式会社Globridge・株式会社ピアンタカンパニー【経営者インタビュー】

新型コロナウイルスの影響により苦境に立たされている外食業界。その現状と今後の道筋について、国内外に40ブランドの飲食店を展開する株式会社Globridge 代表取締役 大塚 誠氏と、都内でイタリアンレストランを展開する株式会社ピアンタカンパニー 代表取締役 伊藤 秀樹氏の両氏に、お話を伺った(インタビュー日:2020年4月16日)。


――新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言を受け、経営状況はどのような影響を受けていますか。

 

 伊藤氏:正直なところ3月の段階では比較的楽観視していて、お客様の出足にもそこまで影響はないと踏んでいました。早期に経済活動が戻ると予測しており、まずはスタッフ全員が辞めずにすむよう給料の補償をアナウンスしました。しかし現在は長期化する可能性も見えてきて、3月の段階でできると思っていたことも半年先まで続けるとなるとさすがに厳しい。ただ、努力をしたところで事態が収束するものではありませんので、今は受け入れてどう舵を切るかが大切だと考えます。


 大塚氏:私も最初は楽観的でした。スタッフを守るというのも伊藤さんと同意見で、絶対に経済は復活するし、その時にスタッフがいないということがないようにとにかく守ろうという考えでした。しかし、想定よりも収束時期が見えてこない。私は海外事業も担当していますが、マレーシアもオーストラリアも都市閉鎖期間をどんどん延長しています。オーストラリアに至っては封鎖が解除されるのは9月かもしれないという話もあります。厳しく制限している国が収束していない状況で日本が好転することは考えにくく、より長期化する可能性が高いかもしれません。

現在は、この危機感を共有してスタッフ達にもアラームを流す段階にきていると思います。シミュレーションも、2年間店舗を休業する前提で売り上げをつくるビジネスを生み出す、という方向に組み直しているところです。

想定外だったとはいえ、今までの自分たちの持っている商品と営業構造が脆弱だったということですね。商品が営業構造に頼らなくても良いレベルではなかったと感じています。


――今この局面で想定するシナリオは具体的にどのようなものですか?

 大塚氏:今動いていることが3つあります。

①Uberのバーチャルレストランブランド立ち上げ

②WEVOの最適解を作る

③通販のモデルを作る

 この3つです。1.に関しては、すでに現在50店の契約が決まっています。弊社のブランドである「宅配からあげ専門店あげたて」をモデルに、追随する第2、3のブランドを作っていき、売り上げ支援をメインに両者win-winになれるような道筋を立てたいと考えています。2.の「WEVO」は弊社グループの飲食店集客改善サービスですが、今までイートインの集客支援をしていたものをケータリングとテイクアウトへシフトする準備に入っています。ここは集客競争が始まっているので、WEVOをうまく利用できる方法を早く形にしたいです。3.の通販ですが、すでに弊社ではスタートしていて、ここがうまくいけば通販WEVOという形で他企業をサポートする仕組みを作ることもできると考えています。

 しばらくイートインは再開できないので、ケータリングや通販も含めた顧客資産をつくる意図です。ただし既存の宅配システムやメニュー等に頼っていると、今まで同様、営業構造への依存になります。そうならないために、マーケティング上のSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)をより適切化し、自店と周辺商圏の消費者ニーズをマッチさせることが必要です。今までは数字上で来店数×客単価=売り上げという見方をしていて、お客様を見ていませんでした。その反省を活かし、周辺消費者にマッチする業態を展開し、更に顧客資産としてどうマネジメントするかという考え方に基づきやっていこうと考えています。つまり、我々が顧客と直接100%繋がる状態にしようということです。

 まさか来店がない世界がくるとは思いもしませんでしたが、考えてみると台風などの天災でも来店という選択肢を奪われる可能性はあるわけで、来店の売り上げ構成比100%というビジネスは危険だったという結論です。良い状態ではない時に盛り上がる事業ポートフォリオを持っておく、来店しないビジネスモデルを作っておくべきだということです。


――経営としての「優先順位」を教えてください。


 伊藤氏:まずスタッフ皆を守ることは大前提ですが、長期化の様相を呈している現状ではどんどんフェーズを変えて行かないと破綻してしまいます。その上で優先順位としては、1.資金集め、2.キャッシュアウトをいかに減らすかです。

現在、弊社の規模では目一杯の融資を受けることができて、テナントの賃料交渉もひと段落したところです。今まで欲がなくやってきましたが、この状況になってみてお金を稼げる経営がいかに大切だったかという教訓を得ています。

それから、借金をしてスタッフを守るからには結束を強めておかないと、崩壊の始まりになってしまうとも感じています。自社の理念、考え方をどれだけスタッフが理解しているかを測り直すフェーズにきていますね。


 大塚氏:伊藤さんとまったく同感です。今はスタッフを守るということが大事。ここまで資金調達と止血をやってきたつもりで、あとは今後の国からの支援などもありますが、そこありきでも仕方がありません。飲食店売り上げが1~2年間ゼロのままという前提で経営することは簡単な話ではありませんが、このままの状況であればスタッフ全員雇用は無理です。どこまで守れるのかのせめぎ合いですね。


――最後に一言、総括をお願いします。

 伊藤氏:頭の中を新型コロナウイルスに支配されている状態ですが、とにかく頑張りましょうとしか言えないですね。あとは自分自身も感染しないようにということです。


 大塚氏:前向きに考えると、飲食店企業が売り上げゼロになるという、普通では考えられないことに取り組む時間をもらえたことは良かったとも思います。今、自分が発したメッセージが相手に意図しない形で受け取られる世相だと感じているので、そういう状況下で経営者として、リーダーとして一層しっかり判断しないといけないと気を引き締めています。


「逆風に立ち向かうシナリオ」の整理

■長期化する想定でシナリオを組み直す

1.資金集め、2.キャッシュアウトをいかに減らすかに取り組みつつ、長期間来店売り上げが見込めない前提で対策する

■顧客資産を持てる仕組みを作る

イートインに頼らず、テイクアウト、宅配、ケータリングや通販から顧客資産を獲得する

■理念を共有して結束を固める

スタッフの雇用を守ることを大前提に、理念を共有し結束を固めておく

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※記載されている会社概要や肩書き、数値や固有名詞などは取材当時のものです。
※取材:株式会社MS&Consulting 相崎 哲史

MS&Consulting 相崎哲史
MS&Consulting 相崎哲史
2004年日本エル・シー・エー入社、コンサルタントとしての経験を積んだのち、2008年に株式会社 MS&Consulting​の独立創業に携わる。現在はコンサルティング部隊の副本部長として数多くのコンサルティングプロジェクトの責任者を務める。人材教育のDX化など新たな動きも発信。 ​所属:株式会社MS&Consulting リレーション事業本部 副本部長

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