【優秀店長インタビュー】コロナ禍でも昨年対比120%、その鍵は?◆味の民芸 高島平店◆
コロナ禍でも昨年対比120%を叩き出している味の民芸・高島平店。その成功の鍵となった「宅配事業」「店舗づくり」のマネジメントポイントについて、駒形ストアマネージャーにお話しを伺いました(インタビュー日:2020年11月16日)。
□人数が多い、学生が多い等、統率の難しい組織では『シンプルマネジメント』が鍵、目標の数は絞り込む。
□目標の数を絞り込む代わりに『細かく言う』『一貫して言う』。
Q.新型コロナはどの程度、売上に影響しましたか?
2020年3月から業績が落ち始めました、ただ、昨年対比はずっと超えています。ラッキーだったのは約1年前から宅配を始めていたことです。はじめはウーバーイーツなど宅配代行から始め、今は自店舗パートナーが配達する形での宅配にも取り組んでいます。2020年9月は店舗売上だけだと前年割れ、宅配を含めて前年105%、10月は店舗売上も前年110%、宅配含めて120%という結果です。
味の民芸では和食を提供。うどんやそばの宅配が多い。
Q.「宅配」が上手くいっている理由は何ですか?
「お渡し直前の仕上り」を大切にしています。
お客様が飲食業である私達に一番何を求めているかというと、「美味しいお料理を食べたい」だと思っています。
ですが、宅配は調理してからお客様が召し上がるまでにどうしても時間が空きお食事が冷めます。温かさは美味しさの条件ですので、なるべく温かさが保たれるよう「お渡し直前の仕上り」に重きを置いています。
また、お約束した時間にできあがっていないと、お客様は次にまた頼みづらくなります。リピート注文を頂くという面でも「時間を守ること」はとても大切だと感じています。
宅配成功の鍵は「仕上り時間の管理」と「約束の時間を守ること」
Q.仕上り時間をどうコントロールしていますか?
打ち手① 専任の司令塔
「店内注文」と「宅配注文」で調理ラインは一緒ですが、的確に指示を出すため司令塔は別に専任で配置しています。
打ち手② ショートミーティング
また、「あの時はこうした方が良かった」「今度からこうしよう」といったような簡単な打合せの時間を適宜取って軌道修正しています。
宅配代行に加えて自店舗宅配も始まり、そこにコロナ禍。現場はバタバタですし、正直、失敗の連続です。失敗から学び、次に活かすことがコロナ禍では特に大事だと感じています。
Q.宅配をこれから始める店舗へのアドバイスは?
自店舗配送の場合は、配達パートナーの確保に目処をつけてから始めることが必要だと思います。注文がない時、配送パートナーには洗い場やホールをやってもらう必要がありますから、兼任に理解を示してくれるパートナーを採用しなければなりません。幸運なことに、今のお店では既存パートナーの中で手をあげてくれた人が何人もいたのですが、別のお店の時は配達パートナーの確保に苦労しました。
Q.店内飲食の売上も前年越えです。業績維持のために取り組んでいることは?
当店は郊外に立地する店舗ですが駐車場が15台分しかありません。その中で今の売上を出せているのは近所のお客様にご来店頂けているからです。その方たちが求めていることに全力で応える、それが業績が維持できている理由だと思います。
具体的には次のことにこだわってマネジメントしています。
①美味しいお料理を提供する
先程もお話しましたが、お客様が私達に一番何を求めているかというと「美味しいお料理」だと考えています。
当店は従業員数35名と大きなチームです。たくさんの目標を追うことは難しいので、この点だけは強調して、わりと細かく伝えています。
【マネジメント例】
パートナーが調理した料理はなるべくチェックして、「天ぷらの盛り付けはもっと立体的にね」「ちゃんぽんは彩り良く盛り付けよう」などアドバイス。上手にできるようになったらすかさず「おお上達したじゃないか!すごく美味しそうだよ」などと褒めます。
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②そこまでやるかの感染症対策
当店のお客様には1人暮らししているご高齢の方も多い。そういった方は今、コロナ禍で家にじっとしていなければならない中で誰も話し相手がいない。
先日もあるお客様から「1人で家にいると寂しいが、ここに来るとみんながいる。みんなが元気に笑顔で接客している姿を見ると元気になる」とおっしゃって下さいました。
ですから、面と向かっての会話にならないように立ち位置を気をつけながら、接客はコロナ前と変えないように努めています。
常連様が求めていることは工夫して提供し続ける
また、感染症対策は妥協せずに行っています。「マスクの正しい着用」など基本的なことはもちろん徹底していますが、取り組んで良かったのは「各テーブルへ小さいアルコールスプレーを設置したこと」です。
飲食店の口コミサイトでも書き込まれる程、お客様の印象に残っているようです。「そこまでやっているなら、他の事もちゃんとやっているんだろうな」と安心感につながるようです。
「そこまでやっているなら」が感染症対策の安心感につながる
Q.変化に全員で対応できていますね。店長として大切にしていることは何ですか?
自分が休みでいない時でも同じ営業ができるお店を作りたいという思いがずっとあります。ですから、「パートナーの主体性」を育てることを大切にしています。
①パートナーからの質問には「切り返し質問」
入店して間もないパートナーにはわからないことはどんどん聞いてもらいますし、その場ですぐに回答します。
その中で、同じような質問を何回もする人が出てきます。そういう人は何かあると私に頼ってしまう。それでは私が居ない時に良い営業はできません。
そういったパートナーには質問を返します。
パートナー:あと幾つ準備すればいいですか? 店長:幾つあれば足りると思う? |
パートナー:あと幾つ準備すればいいですか? 店長:10個お願い。次からは「〇〇個準備しようと思いますがいいですか?」と聞いてみて。 |
お客様の注文を受けてから「食材の準備が不足してる!」と気がついていたところが、その前段階で「あっ補充しなきゃ」と気づけるようになります。そういった細かい判断力の積み重ねで営業は変わってきます。
②長所を発揮できる環境づくり
私は「俺について来い!」という店長ではありません。店長としての強みを改めて考えた時に「人の事を良く見ている、観察することが好き」と思い至りました。
そして、その強みを活かすために、みんなの長所を集めて店舗運営をするように変えました。
装飾が得意なパートナー➡装飾担当 接客が上手なパートナー➡指導担当 |
最初はそこまでの責任は持ちたくないというパートナーが多かったのですが、コミュニケーションを取りながら、少しずつやりがいを感じてもらえるようにしています。
Q.コロナ禍となり、パートナーのマネジメントで変化させたことはありますか?
コロナ対策に宅配事業、お店が忙しくなってきた時に「ああ無理そう」となる時があります。そういう時は意識的に「大丈夫、大丈夫」「できる、できる」と声がけをしています。全然大丈夫じゃないんですけどね(笑) 肩の力を抜いてあげることが必要なので。
Q.コロナ後も見据えて店長として大事なことは何だと思いますか?
「失敗に学ぶ」という姿勢です。
色々なことがこの1年で変わりました。対応するために毎日試行錯誤の連続。だからこそ、失敗の連続は当たり前です。でも、その失敗の中で改善策を見つけて、次同じ失敗をしなければよいという気持ちで取り組んでいます。
「あぁやるの嫌だな」ではなくて、「どうしたらできるようになるかな?」と、ポジティブに発想するようにしています。もともとネガティブな人間だったんですが、ここ数年で変わりました。
Q.ポジティブ発想に変われたきっかけは何ですか?
毎年、顧客満足度調査(MS&Consulting社のミステリーショッピングリサーチ)の結果が良かった店舗が取り組みを発表する機会があります。そこで優勝を頂けたことがきかっけです。今まで会社の中で勲章をもらったことがなかったんです。「やればできる」という自信になりました。
私達はチェーン店です。本社があって守ってもらえている中での営業。個人店の方は今、本当に大変だと思う。その点を感謝しながら、今まで経験したことのない事態、現状を打破するため自分含めみんなで考え、前向きに臨んでいきたいと思います。
ありがとうございました。
- 取材日: 2020年11月16日
- 取材・文: 株式会社MS&Consulting 児玉彩子
- 掲載情報は2020年11月現在のものです。
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