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消費者の声から考える小売店に求められるサービスの変化【セミナーレポート】

『ウィズコロナとなり小売業へお客様が求めているサービスはどのように変化しているのか?~お客様の声から考察する~』と題したセミナーを開催いたしました。以下に概略を掲載します。(2020年7月29日開催)


「安心・安全」が選ばれる小売店の条件に

各店舗の新型コロナウイルス対策の状況について覆面調査を実施したところ(20年5月30日~6月10日に実施)、以下のことがわかりました。


1.感染症対策について、顧客評価が「とても安心できた」の場合、再来店意向は75%と高水準に達する。


<評価別の再来店意向>


2.ところが、「とても安心できた評価」の獲得率は調査全体のわずか28%。新型コロナの感染拡大により、消費者の期待する「あるべきオペレーション」が変化しており、従来のオペレーションマニュアルの有効性が低下したことが要因の1つと考えられます。


<感染症対策について「とても安心できた」評価の店は少ない>

※調査期間:2020年5月30日~6月10日、設問文:感染症の心配なく店舗を安心して利用できると感じましたか、対象業界:スーパーマーケット・ドラッグストア・食物販、調査数:42件、調査方法:覆面調査


つまり、感染症対策は、改善余地が大きいうえに、お客様の再来店意向を高めるうえでも効果が高い施策と言えるのです。



半数以上のお客様が不安を感じながら店舗を利用

6~7月は徐々に自粛ムードが緩くなり街の人出が増えてきましたが、弊社が7月末~8月頭に行ったネットリサーチによると、飲食店に比べれば安心・安全と思われている小売店においても、半数以上の消費者が他の人が触った商品を購入することに抵抗を感じていることがわかりました。

<他の人も手に取れる商品を購入することへの抵抗感>

※調査期間:2020年7月30日~8月3日、設問文:小売店において様々なお客様が触れることができる商品を購入することに抵抗を感じますか?、有効回答数:833、全国のミステリーショッピングリサーチモニター会員向けWEBアンケートより


以前は「安心・安全」は当たり前のものと認識され、お客様の印象に強く残ることはありませんでしたが、ウィズコロナにおいては「安心・安全」が再来店につながるという変化が生まれているのです。


「安心・安全」を訴求する5大オペレーション

では、お客様に「安心・安全」を感じて頂くためにはどのようなオペレーションが重要なのでしょうか。「新型コロナウイルス対策調査」の結果からわかったことを紹介します。

1.全ての入口にわかりやすく消毒液を設置

お客様が気がつく位置に設置することが重要。自動もしくは足で押すと消毒液が出てくるタイプは評価が高い。

2.対策をPRする掲示はボリューム良く(特に入口付近)

3.手に触れるものの除菌度合いをPR

カゴやトレーなどの除菌をしていることを明確に伝える。除菌済み表示をする、お客様が自分で除菌できるよう消毒液を置く、カゴの消毒はお客様が見える場所で行う、カゴ置き場に返却用・除菌済みの掲示をするなど。

4. ソーシャルディスタンスを意識した売り場接客

背中を向けてすれ違う、すれ違い時に距離を取る、発声を伴わない会釈で対応する、控えめなお声がけなど。

5. 飛沫対策シート越しでも伝わる感じの良いレジ対応

「お釣りはトレーに失礼いたします」の一言や感じの良い会釈、レジ対応毎の除菌スプレー使用など、感染防止対策をしながらも感じの良い接客をできるやり方を生み出せれば差別化につながる。



ポイントは「対策がお客様の目に触れるようにアピールすること」です。どれだけ対策を徹底していてもお客様に伝わらなければ不安解消につながりません。バックヤードで行っていたカゴの消毒を入口で行うなど、対策の見える化がお客様の安心感につながります。また、接客面では「安心・安全」と「接客による顧客満足」のバランスを取ることが求められています。お客様との距離を取りつつ、なおかつ、気遣いを感じる接客が求められているのです。


感染症対策の徹底には、スタッフ一人ひとりの「改善意識」と「顧客満足の実感」が必要

コロナ禍でもお客様に選ばれるためには「いつ訪れても安心・安全を感じるお店」である必要があります。そして、そんなお店を実現するには、スタッフ一人ひとりの「改善意識」と「顧客満足の実感」が鍵となります。


では、どうしたらその2つを育てることができるのか?実は「店舗スタッフ主体の改善活動」を進めることが有効な打ち手となります。お客様が求めることの変化を敏感に察知できるのは現場。その現場が主体となって新しい接客方針や感染症対策を考え、実行する。するとお客様から好反応が返ってくることが増え、スタッフの「もっとお店を良くしたい」という「改善意識」が高まる。この好循環を目指すのです。


また本部サイドのポイントは、そのような活動により好事例が生まれた場合、その事例を本部で素早く吸い上げ、各店舗に横展開することです。好事例を素早く全店展開できる企業体質になれば、他企業との差別化要因となり、顧客のファン化を進めることができるはずです。

この記事に、コロナ禍を乗り切るヒントが1つでも見つかっていましたら幸いです。

文:丸山隼

MS&Consulting 江端慎二
MS&Consulting 江端慎二
早稲田大学を卒業後、株式会社MS&Consultingに入社、独立創業に携わる。コンサルティング実務、小売グループ統括を経て、現在は副本部長として外食、流通・サービス業で数多くの支援を担当。 所属:株式会社MS&Consulting リレーション事業本部 副本部長

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