【消費者のホンネ】ショッピングセンターに行く理由は今後どうなる?コロナ前に戻る?それとも変わる?
欧米ではワクチン接種が進んだことを背景に、コロナ前の活気を取り戻しつつあります。日本でもワクチン接種が進みつつあり、専門家会議において今後の経済活動再開に向けた議論も始まっています。そんな現在の一般消費者が「ショッピングセンターを利用する理由」はどう変化したのでしょうか?ネットリサーチを用いて調査しました(調査期間:2021年9月20日~22日、n=1070)。
- 現在のショッピングセンターを利用する理由、1位は「買物がしやすい立地」、次いで「店舗のバリエーションが多い」
- 利用する理由の順位は「男女」で異なる
- 経済活動再開後は、選ぶ基準に変化が予想される
- 30-50代のショッピングセンターを利用する理由はコロナ前に戻る可能性が大きい
- 「行くのが楽しみな場所」としての役割がより求められる
1.現在のショッピングセンターを利用する理由、1位は「買物がしやすい立地」、次いで「店舗のバリエーションが多い」
まず、コロナ禍の「現在(2021年9月末)」におけるショッピングセンターを利用する理由について調査しました。当てはまるものを全て選択してもらった結果、1位は「買物がしやすい立地」、2位は「店舗のバリエーションが多い(周辺にない店舗がある)」からという結果となりました。
図1 ショッピングセンターを利用する理由
※設問:[コロナ禍の現在について]ショッピングセンターを利用する理由を教えて下さい(複数選択可)
2.利用する理由の順位は「男女」で異なる
次に、ショッピングセンターを利用する理由が「男女」でどのように異なるかを調べました。その結果、1位と2位は共通していましたが、3位以下では男女による違いが表れました。
男性の3位は「飲食店やカフェが充実しているから(21.2%)」でした。女性と比べれば男性の方が、コロナ禍でも飲食を目的にショッピングセンターを利用する人が多いようです。
一方、女性は3位に「家族で利用しやすいから(19.7%)」、5位に「遠出できないから(17.7%)」がランクインしました。
女性は男性より新型コロナウイルスに対して一貫して強い危機感を持ち続けており(新型コロナウイルスに関する消費者意識調査より)、その点が反映されている結果と言えます。コロナ禍となり遠出しずらい状況の中で家族が利用しやすいという点が、特に子育て世代の30代女性に重宝されていることが分かります。
図2 ショッピングセンターを利用する理由(男女別)
※設問:[コロナ禍の現在について]ショッピングセンターを利用する理由を教えて下さい(複数選択可)
図3 「家族で利用しやすいから」ショッピングセンターを利用する比率の変化(
性別・年代別)
※設問:[コロナ禍の現在について/経済活動再開後について]ショッピングセンターを利用する理由を教えて下さい(複数選択可)
3.経済活動再開後は、選ぶ基準に変化が予想される
では、この傾向は日常生活の回復が期待される今年の秋冬以降においてどう変わるのでしょうか?「経済活動再開後」について続けて聞いたところ、順番に大きな変化はないものの、一部の項目で割合の変動がありました。
まず、男女共に「買物や食事以外でも楽しめる」を選んだ人の比率が10pt以上高まっていました。コロナ禍においては長居をして目的以外のお店に寄ることが少なかったと想像されますが、そういった「寄り道の楽しさ」を求めてショッピングセンターへ訪れる方が増えていきそうです。
また、女性は「飲食店やカフェが充実している」を選んだ人の比率が16.9ptと大幅に上昇しました。女性の「コロナ禍が落ち着いたらショッピングセンターで外食したい」というニーズが強いことが分かります。
図4 ショッピングセンターを利用する理由の変化(男女別)
※設問:[コロナ禍の現在について/経済活動再開後について]ショッピングセンターを利用する理由を教えて下さい(複数選択可)
4.30-50代のショッピングセンターを利用する理由はコロナ前に戻る可能性が大きい
ここで「この傾向はコロナ前の水準に戻っているだけなのか、それともコロナ前とも違うのか?」という疑問が浮かびました。MS&Consultingではこの調査を2020年8月にも実施をしており、その時の結果と比較をしました。
※前回の調査が30-50代メインで行ったため、今回の結果も30-50代だけに絞り比較。
全項目の推移を図5にまとめました。その結果、多くの項目がコロナ前の水準へ戻っていました。「コロナ禍が収まった後は以前のようにショッピングセンターを利用したい」ことが性別を問わず消費者の思いであると考えられます。
図5 ショッピングセンターを利用する理由の変化(コロナ前から今後)
※前回調査:2020年8月実施/n=491(女性)488(男性)、今回調査:2021年9月実施/ n=422(女性)406(男性)
5.「行くのが楽しみな場所」としての役割がより求められる
これらの調査結果をどのように捉えるべきか、最後に2点にまとめます。
まず1点目、アフターコロナ直後は飲食店を目的とした来店が増えるとともに、買物や食事以外も楽しみたい傾向が高まり滞在時間は長くなりそうです。多様な目的を満たしてくれる「行くのが楽しみな場所」としての役割が今後はより求められると考えられます。
そして2点目は、「感染症対策は”あることが当たり前”の価値観になっていく」という点です。ワクチン接種比率が高まった欧米などでも、店舗における感染症対策は継続しています。今後も「感染症対策が不要になる」と考えるのではなく「感染症対策は当たり前の基準」となり、その土台の上でお客様に買物を楽しんでいただくための施策がより必要になっていくと考えられます。
※執筆:株式会社MS&Consulting チーフデータサイエンティスト 錦織浩志