『アパレル店舗での声かけ』に対する消費者意識調査 ~コロナ禍を経てお客様のニーズは変わるのか?~
コロナ禍となりソーシャルディスタンスを取ることや他人との接触機会を減らすことが当たり前となった現在、一般消費者の「アパレル店舗での声かけに対する意識」はどう変化したのでしょうか?ネットリサーチ結果を報告致します(2021年9月20日~22日調査、n=1070)。
- スタッフから声をかけてほしい比率は全体の23.6%
- 「20代女性」「40代男性」は声をかけてほしい比率が比較的高い
- 経済活動再開後は「声をかけてほしい比率」が若干高まる可能性
- ただし「30-50代女性」はコロナ前ほど声をかけてほしい比率が戻らない
- まとめ:「お客様からスタッフへ声をかけやすい店舗づくり」が今まで以上に重要になる
1.スタッフから声をかけてほしい比率は全体の23.6%
まず、コロナ禍の「現在(2021年9月末)」におけるアパレル店舗での声かけに対する意識を調査しました。その結果、「こちらから声をかけるのでスタッフからの声かけはなくていい」を希望する人が最も多く56.7%となっていました。
ただし「積極的に声をかけてほしい」「こちらが声をかけたい時にスタッフから声をかけてほしい」を合わせた、‟スタッフから声をかけてほしい人の割合”は23.6%(約4人に1人)と、コロナ禍においても声かけニーズは一定数存在していることが分かります。
図1 アパレル店舗での声かけに対する意識
2.「20代女性」「40代男性」は声をかけてほしい比率が比較的高い
次に「男女」で意識がどのように異なるかを調べました。結果、「男性」の方がスタッフ側から声をかけてほしいと思っている比率が若干高い傾向にありました。
図2 性別・アパレル店舗での声かけに対する意識
スタッフから声をかけてほしい比率を「年代別」にみると、男性は40代が最も高かったのに対し、女性の場合は20代が最も高くなっていました。コロナ禍の影響はあると考えられますが、女性の方が年代によって声かけに対する意識の差が大きくなっていました。
図3 年代別・アパレル店舗での声かけに対する意識
3.経済活動再開後は「声をかけてほしい比率」が若干高まる可能性
では、この傾向は日常生活の回復が期待される今年の秋冬以降においてどう変わるのでしょうか?「経済活動が再開した今後」について、続けて聞いたところ、声をかけてほしい比率は若干高まることが分かりました。この傾向は女性の方が顕著でした。
同時に「こちらから声をかけることもなくスタッフからの声かけもなくていい」とスタッフとのコミュニケーションを避ける人の割合も、女性の方が減少幅が大きくなっていました。
また「こちらから声をかけるので、スタッフからの声かけはなくていい」の割合が圧倒的に多い状況に大きな変化はありませんでした。
図4 性別・アパレル店舗での声かけに対する意識変化
4.ただし「30-50代女性」はコロナ前ほど声をかけてほしい比率が戻らない
ここで「この傾向はコロナ前に戻っているだけなのか、それともコロナ前とも違うのか?」という疑問が浮かびました。MS&Consultingではこの調査を2020年5月にも実施をしており、その時の結果と比較をしてみました。
※前回調査が30-50代女性メインの調査だったため、今回調査データも30-50代女性だけに絞り比較
推移を図5にまとめました。その結果、「スタッフ側から声をかけてほしい比率」は経済活動再開後を考えた時でもコロナ前より低くなっていました。コロナ禍においてソーシャルディスタンスや他人との接触機会を減らすことが当たり前になってしまった今、「スタッフ側から声をかけてほしい」と考える人は30-50代女性では減っていきそうです。
図5 アパレル店舗での声かけに対する意識変化(30-50代女性)
※前回調査:2020年5月実施/n=528、今回調査:2021年9月実施/n=422
一方で最大のボリューム層である「こちらから声をかけるのでスタッフからの声かけはなくていい」と答えた人の割合はコロナ禍直後に増えて以降、今後も大幅に減少することはなく、その割合を維持していきそうです。このことから、「お客様からスタッフへ声をかけやすい店舗かどうか」が今後より重要になっていくと考えられます。
5.まとめ:「お客様からスタッフへ声をかけやすい店舗づくり」が今まで以上に重要になる
日常が戻る中で「声をかけてほしい」人の割合は徐々に戻っていくと考えられます。ただし、今年の秋冬の段階では、コロナ前の水準にはまだ戻らないと推察できます。また、「こちらから声をかけるのでスタッフからの声かけはなくていい」が最大のボリューム層であることは変化がないことから、入店時の挨拶や待機時の目配りなど「お客様からスタッフへ声をかけやすい店舗づくり」が今まで以上に大事になると考えられます。
※執筆:株式会社MS&Consulting チーフデータサイエンティスト 錦織浩志