正解が見えない時代の顧客の声との向き合い方 ◆外食企業様向け◆【セミナーレポート】
「コロナ禍におけるテイクアウト・デリバリー戦略」「今後の飲食店経営の見通し」といった、アフターコロナにおける店舗経営の在り方をテーマにしたトークセミナーを実施いたしました。特別ゲストは株式会社プレジャーカンパニー遠山氏、モデレーターは株式会社MS&Consultingが務めました。【開催日:7月2日】
1.コロナ収束後も3割程度のお客さまは戻らない?
弊社モニターに対する調査の結果、「コロナ前と比較して、外食の利用機会が減った」と回答した人が全体の約9割を占めました。一方、「コロナ後に外食機会が増えると思う」と回答した人は約6割。これは他の業種と比較してトップクラスの利用意向ですが、コロナ終息後も利用意向が元に戻らない層、つまり『失われる顧客層』が3割ほど存在する可能性があることが分かりました。
※調査期間:2020年5月15日~16日、有効回答数:1,109名、全国のミステリーショッピングリサーチモニター会員向けWEBアンケートより。
2.再来店のカギは「感染症対策への安心感」
また、覆面調査の結果、飲食店を利用して「(感染症対策について)非常に安心だった」と感じた人が約3割いましたが、「非常に不安を感じた」「やや安心感に欠けた」と感じた人も約3割に上ることが分かりました。
<感染症の心配なく店舗を安心して利用できると感じましたか?の回答分布>
※調査期間:2020年5月8日~6月18日、飲食店対象318件の覆面調査結果より。
そして、この感染症対策への安心感が再来店意思に大きな影響を及ぼしていることがわかりました。感染症対策について「非常に安心」と感じたお客さまが「このお店に必ずまた来たい」と評価する確率は、平時を大きく上回る61.5%に上りました。逆に「不安」を感じさせた店舗では14.4%に留まりました。店舗利用時にお客さまが感じる感染症対策への安心感は、リピート要因にも離反要因にもなり得るのです。
<「感染症対策への安心感」の評価別にみた「必ずまた来たい」の獲得率>
※調査期間:2020年5月8日~6月18日、飲食店対象318件の覆面調査結果より。
※平常時外食平均:調査期間:2019年1月~12月、飲食店対象45,833件の覆面調査結果より。
3.「安心感につながる取り組み」とは?
もし、「安心して利用できる店」にお客さまが再来店する場合、感染症対策が万全な店は失った3割の売上を補うことができるかもしれません。
さて、お客さまはどういう時に「安心」あるいは「不安」を感じるのか、もう少し深堀りしてみましょう。
「感染症対策への安心感」につながる要因のトップ5は、次のようになっています。
また、「感染症対策への不安感」につなげる要因のトップ5は、次のとおりです。
ここから、「注意喚起の案内・POPを貼り出すこと・目立たせること」や「触れやすいものの消毒」が特に重要なことが分かります。
ただ、「触れやすいものの消毒」については、実際に消毒をしているかどうかはお客さまは見てもわかりません。遠山氏との議論の中では、『消毒完了後に「消毒終わりました!」などホールスタッフが大きな声で言う』等の取り組みが、元気を売りにしている系統のお店では認知の意味で効果的、といった話も挙がりました。
弊社実施の覆面調査(ミステリーショッピングリサーチ)では、お客さまの感染症に対する定量評価に加え、店舗利用時の状況や評価の理由をコメント評価から知ることができます。例えば下記のようなコメントが店舗に届きます。
お客さまからこのような具体的なフィードバックを得て、「感染症対策の徹底」と「お客さまへの積極的な働きかけ」を店舗スタッフ自らが考えていくこと、また会社や店舗の方針を決定することは、今後の利用客数の回復に向けて必ず取り組んでおいていただきたい事項です。
4.「テイクアウト収益化」に向けた取り組みの具体例
現在、落ち込んでいる売上を補うために多くの店舗がテイクアウトに取り組んでいます。
テイクアウトの収益を高める策には、「①テイクアウト利用客の固定客化」「②イートイン利用への誘導」という2つの方向性がありますが、②を実現するには、「テイクアウト商品の味」に加えて「入店対応」が重要であることを、以前テイクアウトセミナーでご紹介しました。
→詳しくはこちら
今回のセミナーでは株式会社プレジャーカンパニーの遠山氏より、テイクアウトサービスの「味」と「入店対応」の評価を高め、売上アップにつなげる事例をご紹介いただきました。
<プレジャーカンパニー様の事例>
5.消費者が飲食店に求める期待の変化
コロナに伴う外出自粛が徐々に緩やかになり、テイクアウトだけでなくイートイン(店内飲食)の利用機会も少しずつ増えていくはずです。では、消費者が飲食店をイートインで利用する際の期待は、コロナでどのように変化したのでしょうか。
弊社での各種調査の結果をまとめると、下表のように、①極力感染の不安なく利用できることを前提として、②家では食べられないメニューという印象をいかに訴求できるかが再来店の鍵の一つになると考えます。
※②家では食べられないメニューという印象をいかに訴求できるかの事例※
「生ビール、久しぶりじゃないですか?美味しくしましたよ!」と言葉がけする。「家だと色々なおつまみ食べられませんよね?」の前提で種類を多数取り揃えたおつまみメニューを提供する、など。
<種類を多数取り揃えたおつまみメニュー事例 / 株式会社アクティブカンパニー>
<これからの飲食店に求められる「QSCA」の変化>
「コロナ禍になったのでお客さまに接近してしまう接客は大事でない」ではなく、「コロナ禍だからこそ、サービスによって、商品のクオリティやクレンリネスの価値を高めることができる」と言えるのです。
6.アフターコロナで生まれる「新たなニーズ」
セミナーでは、「これから顕在化してくるであろうニーズ」について遠山氏に伺いました。
これらのニーズに対応すべく、プレジャーカンパニー様では「コースの最低利用人数の変更」や、「祝い事での利用促進」といった施策のほか、「店舗毎の取り組み成果をタイムリーに共有」することで改善のスピードを早め、新たな環境への適応を図られていることなどを伺いました。
徐々に回復の兆しを見せる外食需要ですが、アフターコロナにおける対応によって、お客さまが集まる店と敬遠される店の二極化が進む可能性があります。「消費者の期待の変化」を正しく読み、適切な対応を徹底していくことが必要です。
文:株式会社MS&Consulting 永渕 孝紘