外食ならではの魅力を最大化させてお客様の心を掴む ≪居酒屋・ダイニング編≫【新型コロナ対策セミナー】
本セミナーでは「ウイズコロナの時代に居酒屋・ダイニング業態にお客様が求めていること」を、2020年7月に実施したWEBアンケートの結果を交えて解説しました。以下に概略を掲載します。
【開催】7月21日
【講師】株式会社MS&Consulting 角 俊英
現在、来店しているお客様はどんな人?
コロナ禍においても、来店してくれているお客様はどのような方でしょうか?以下の図は、昨年と直近1ケ月を比較して外食の利用頻度がどのように変化したかを利用目的別に調査した結果です。次のことがわかります。
・急増➡「ひとり利用」
・増加➡「家族との利用」
・大きく減少➡「仕事関係での利用」
「友人や同僚との利用」
<目的別にみた外食頻度の変化>
※調査:2020年7月、設問:あなたは(昨年/この1か月間)、(家族/友人や同僚/仕事関係/ひとり)で夕食で外食に行ったのは、どのくらいの頻度でしたか?有効回答数:407名
また、夕食に利用したい業態についても質問したところ、1年前だと「ひとり利用」の場合にはあまり選ばれなかった居酒屋業態が、直近1カ月では30%強の人に選ばれており、居酒屋業態をひとりで利用することへの抵抗感が薄くなっていることがわかりました。居酒屋業態においては、ひとりで利用しやすいメニュー開発や席配置などに取り組む価値がありそうです。
<夕食に利用したい業態の優先順位>
※調査:2020年7月、設問:あなたが(昨年/この1ヶ月間)、 (家族/友人や同僚/仕事関係/ひとり)で夕食に外食で行くと考えたらどのお店に行く優先度が高いですか?(複数選択可)有効回答数:407名
ウイズコロナの今、お客様が求めていることは?
コロナ禍の今、お客様が居酒屋・ダイニング業態に求めていることは何でしょうか?特筆すべきは、長い自粛期間を経て自炊やテイクアウトが日常となった現在においては、今まで以上に自炊が店内飲食の競合となった点です。つまり、‟家での食事にはない、外食ならではの魅力を感じてもらえるかどうか”がより重要になってきたのです。自炊との差別化を図るためのポイント3点をセミナーでは紹介しました。
ポイント1| 自宅では食べられないメニューの提供
「飲食店に行きたくなるメニュー」についてWEBアンケートをしたところ、お客様は‟自宅では食べられないメニュー”を望んでいる様子がうかがえました。
<飲食店に行きたくなるメニュー選択率>
※調査:2020年7月、設問文:居酒屋の次のようなメニューの中で、最も「行きたいな」と思うメニューを最大3つ選んでください(最大3つまで)有効回答数:407名
ポイント2| 外食ならではの魅力を接客で増幅させる
弊社が実施している覆面調査結果を読み込み、お客様が外食ならではの魅力を実感しやすい、ひいては競合との差別化にもつながる、オペレーション候補をご紹介します。
・生ビールの品質管理+提供時コメント
生ビールはお店だからこそ飲めるメニュー。ドリンカーによって味がばらつかないように品質についての教育や管理に注力するのはもちろんのこと、提供時にアピールコメントを添えられるかどうかが、爽快感や美味しさに影響を与えます。
・リーズナブルな小皿メニュー、熱々メニュー
自宅で沢山の皿数を準備するのは大変。お客様が多品種少量を楽しめるように、リーズナブルな価格設定の小皿メニューを増やすのも効果的。また、テイクアウトとの差別化を考えると「熱々で提供できるメニュー」も有力です。
・(空いたお皿が溜まっていない)綺麗なテーブル・中間サービス
自宅では自分で片付けをしないとテーブルは綺麗になりません。食後の片づけをしなくても良い解放感や気楽さを感じていただくために、バッシング等の中間サービスを徹底することも有効です。
ポイント3| 外食ならではの不安は攻めの接客で解消
多くのお客様は依然としてコロナ感染の不安を感じています。外食店舗を選択する際も新型コロナ対策の安心感が重要なキーワードになっていることがアンケートから明らかになりました。感染対策が安心・安全なお店、かつ、自炊にはない魅力を享受できるお店にお客様は行きたいということです。
・着席後に自店の感染症対策を説明する
スタッフからの感染症対策の説明や消毒液の案内は70%以上の店舗で行われていないという調査結果になりました。逆に言うと、安心感を訴求する差別化ポイントになり得るという点です。
・バッシング・清掃・除菌後に「発声」
清掃や除菌をした後に、フロアやキッチンに向けて「〇〇終わりました!」と発声します。お客様に衛生面が徹底されていることを自然に認知してもらう工夫が必要です。
・個別に召し上がっていただく仕組み
予め人数分に取り分けてから提供するといった配慮は、安心感に直結します。
【事例紹介】徹底した感染症対策で昨対9割まで回復
セミナーでは、テイクアウト活用・固定客化による売上回復・助成金活用などのテーマでいくつかの事例を紹介しましたが、本レポートでは「感染症対策の徹底」を行ったことで昨年対比1割となった売上を9割にまで回復させることができたある企業の事例をご紹介いたします。
この企業では「感染症対策は顧客接点の1つになる」と捉えました。例えば、入店時の手指消毒。ただ消毒液を置くのではなく、席案内のスタッフが一言伝えるオペレーションにすることで、顧客満足を高める接点の1つになると考えたのです。まずは、感染症対策についてのこの考え方を全スタッフに周知することに力を入れました。次に、オペレーションマニュアルを刷新し、接客シーン別のトークスクリプト用意、自然にできるようになるまでロールプレイングによるトレーニングを徹底しました。さらに、高いスキルをもったスタッフのロープレ映像をクラウドにアップして学習環境を用意し、継続的なセルフチェックができる体制を築きました。 |
これらの工夫によって、先ほど述べたような劇的な売上回復につながったのです。
環境変化に対応した人材育成施策のすすめ
コロナに対応すべく様々な打ち手をご検討されていることと存じます。以下の図では「本部⇔現場」「中期⇔短期」という軸で打ち手を一覧化しました。
<企業経営の面からみたコロナへの打ち手マトリクス>
この中で特にお勧めしたい打ち手は「働き甲斐の再認識」と「教育・研修の教育のオンライン化」です。その理由は、コロナによってスタッフとお客様が接する機会が減ってしまったことにあります。結果、サービス業の働き甲斐の源泉である「顧客満足を実感する機会」が減り、また、「接客経験値」を積みにくくなりました。どちらもサービス品質に大きな影響を及ぼします。今こそ、働き甲斐を感じた事例共有会の開催や、生産性向上のためのトレーニング体制、新しいオペレーションに合わせた評価制度の見直しといった施策の必要性が増しているのではないでしょうか。