お客様は「オンライン接客」と「実店舗接客」のどちらを好んでいる?
この1年で多くの企業から「オンライン接客サービス」がリリースされました。感染症対策という側面もありますが、店舗に行かなくても専門知識を持ったスタッフに気軽に相談できるという点から今後の展開に注目が集まっています。一方で「実店舗で接客を受けたい」という意見も一定数あります。オンライン接客について一般消費者はどう感じているのか、ネットリサーチを用いて調査してみました。
※調査日:2021年2月20日~22日(n=837)
- オンライン接客に興味があるのは全体の42.1%で、20代が最も高い
- 最も興味がある人が多かったのは「フィットネス・筋トレ」で「銀行(投資信託・資産運用の相談)」や「保険の加入・見直しの相談」といった金融系の相談も比較的多かった
- 「オンライン接客に興味がある」と「実店舗で接客を受けたい」の比率を比べたとき「アパレル」「自動車」「不動産」は実店舗で接客を受けたいと答える人が多かった
1.オンライン接客に興味があるのは全体の42.1%で、20代が最も高い
「今後受けてみたい、興味があるオンライン接客サービスはありますか?」という質問に対して「何らかのオンライン接客を受けてみたい、興味がある」と答えた人は全体の42.1%でした。約5人に2人がオンライン接客に興味があることが分かりました。これは実際に受けたことがある人の比率(20.2%)の2倍以上となっており、今後もオンライン接客の利用者は増えていくことが想定されます。
図1 オンライン接客に興味があるか?
※設問:「今後受けてみたい、興味があるオンライン接客サービスはありますか?」
次に、この傾向が年代別・男女別で異なるのかを確認してみました(図2)。「オンライン接客に興味がある」の比率を比較したところ、男女別ではあまり差がありませんでしたが、年代別では若い世代ほど比率が高く、20代が最もオンライン接客に対する興味が高くなっていました。
図2 「オンライン接客に興味がある」比率の年代別、男女別の比較
※設問:「今後受けてみたい、興味がある」オンライン接客サービスはありますか?
2.最も興味がある人が多かったのは「フィットネス・筋トレ」で「銀行(投資信託・資産運用の相談)」や「保険の加入・見直しの相談」といった金融系の相談も比較的多かった
「オンライン接客を受けてみたい、興味がある」と回答した人に、具体的に利用してみたいサービスを聞きました(図3)。その結果「フィットネス・筋トレ」を選んだ人が最も多く全体の13.3%、次いで「銀行(投資信託・資産運用の相談)」「保険の加入・見直しの相談」といった金融系のサービスが続きました。
図3 興味があるオンライン接客の比率ランキング
また、実際に利用したことがある比率と比較すると全ての業種において「興味がある」と答えた人の方が高くなっており、今後もオンライン接客が拡大していく余地があることが分かります。
3.「オンライン接客に興味がある」と「実店舗で接客を受けたい」の比率を比べたとき「アパレル」「自動車」「不動産」は実店舗で接客を受けたいと答える人が多かった
今回の調査では「今後、オンラインではなく実際にお店に足を運んで接客を受けたいと思うものを全てお選びください」という設問も含めました。その結果を「オンライン接客に興味がある」と答えた比率と比較してみました(図4)。
図4 オンラインと実店舗それぞれで「接客を受けたい」比率の比較
オンライン…「今後受けてみたいオンライン接客サービス」
実店舗…「オンラインではなく実際にお店に足を運んで接客を受けたいサービス」
すると「実店舗よりもオンラインで接客を受けたい人が多い」業種は4つあり、最も差が大きかったのは「銀行(投資信託・資産運用の相談)」でした。フィットネス系を除き、銀行や保険といった業種においては、コロナ終息後もオンライン接客の強みを活かせることが可能性が高いことが分かります。
下記のように「オンラインであれば学んでみたい、相談してみたい」というコメントも多く寄せられ、店舗に行かなくても良いことで利用のハードルが下がる効果も期待できます。
▼銀行(投資信託・資産運用の相談)
・投資信託の相談など、お金に関する事は、プライバシーもあるのでオンライン接客があれば利用してみたいです。(40代女性)
・資産運用に興味があるので、気軽に学びを得るという意味で、学習オンラインをしてみたい。そこでためになれば、具体的な自分の資産について、アドバイスも受けてみたいと思う。(30代男性)
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▼保険の加入・見直しの相談
・加入しているがん保険の保険料が、来年の誕生日以降、値上がりするため、他にリーズナブルでおすすめの保険があればオンラインで相談してみたいです。短い時間でも、マスクをしていても、会話することに抵抗を感じるため、オンラインで相談できるのは非常にありがたいです。(30代女性)
・契約に関するものはオンライン接客でも対面と同様のサービスが受けられると感じるから。(40代男性)
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一方「実店舗で接客を受けたい」がオンライン接客を大きく上回っていたのが「アパレル」「自動車」「不動産」といった業種となっており、いずれも「画面上ではなく実際に商品を直接見る」ことが顧客にとっても大事な要素となっているという共通点がありそうです。
▼アパレルショップ
・コロナ渦がおさまってからは実店舗に足を運びたいので、オンライン接客まで受けようとは思っていない(40代女性)
・見て触らないとリアリティーがない(50代男性)
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▼新車ディーラー、中古車ディーラー
・対面でないと信頼感が持てないから(50代男性)
・直接会話をした方が親近感を含めなんだか安心出来るからです。(50代男性)
・高い買い物のときは、相手の顔をみて接客をうけたいので、興味がないです(30代女性)
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アパレルや化粧品など「実物」がある業種や自動車、不動産など「高額な実物」の購入であり担当者の信頼感が大事な業種については、「実際に見てみないと分からない」ということから実店舗が好まれていました。
一方金融商品や保険の見直しなどの「形のない商品」についてはオンラインでも実店舗と同様の接客を受けられると消費者が感じており、また、家にいながら受けられることがサービスを受けるハードルをぐっと下げており、新たな顧客獲得においても有効な手段である可能性があります。
ただし、アパレルや自動車、不動産においても、オンライン接客に興味がある層が一定数いることから、その方たちの評価を高めることで、今後オンライン接客が広がっていく可能性があります。特に20代・30代といった若い年代がターゲットの場合にはより親和性が高まっていくと考えられます。
文責:株式会社MS&Consulting チーフデータサイエンティスト 錦織浩志